標準時間設定の為の時間観測
標準時間設定の為の時間観測では、時間値の設定そのものが重要な目的であるから、特に慎重に観測しなければならない。
一般に、一定の訓練を経た多数の作業者が行っている標準化された一つの作業に要する時間は、各人の作業能力の差によって正規分布する。
また、意識的な努力のもとでの作業集団とそうでない作業集団とを比べると、その平均出来高は、1.25~1.30の差になるといわれる。
このことは、作業速度の取扱及び観測対象者の選択に、充分な配慮が必要なことを意味する。
つまり、時間の設定に関しては、充分な観測と科学的な基礎の上に立った、公正な立場で行うことが必要である。
以下、時間観測の手順を示す。
(1)対象者の選択
対象作業者は、熟練者であることよりも標準作業を行っ ていることの方が大切。
また、作業速度はレイティングにより補正するから、選択上の条件にしなくてもよい。
(2)観測時刻の選択
一日のうち、1ヶ当たりの作業時間には波がある。
これは、調子と疲労に関係する。
故に、観測はなるべく疲労の加わらない時刻が良い。
また作業直後は調子が出にくい為、始業後少なくとも1
時間くらい後に観測した方が良い。
ロット作業であれば、作業の複雑さにもよるが、50個目位から観測した方が良い。
(3)観測回数の決め方
同一作業者の同一作業における時間値のバラツキは、 一般に正規分布する。
これは、同一作業者でも細かな動作まで常に一定であ ると限らないからである。
従って、バラツキのあるデータから、何回かの観測によ って代表値(この場合は平均値)を求めるには、サンプ リングの理論を適用する。
一般に、生産量が多く同じ作業をする作業者の数が多 い時には精度を高くし、生産量や作業者の数が比較的 少ない時には、精度を低くする。
精度と観測回数を求める式は、割愛する。
(4)作業測定
ストップウォッチ法により測定した場合は、レイティング して正味時間設定する。
P・T・S法を用いた場合は、その必要はない。
正味時間の設定を行う作業は、下記のとうりである。
①部品取り付け、素材加工をする場合の手扱い、及び機械時間
②部品又は半製品を交互に組み立てる時間
③部品又は半製品を検査するための時間
④部品又は半製品を運搬するための時間
⑤定められた範囲での不良品の修正、再加工時間
上記項目については、製品1単位について必ず発生するもの、また特定の周期をもって発生するものの時間を測定し、正味時間を設定する。
(5)異常値の取扱い
時間観測中に、以下の理由で異常値が発生した場合、
①標準と異なった作業をした場合
②個人的な動作(身体の一部に触れる、汗を拭く等)を分離できなかった場合
③材料や部品が不良、又は規格外のために起こる異常地
この様な異常値が発生した場合は、観測中に“しるし” をつけ、観測が終った後で除外するかどうか検討する。
(6)レイティング標準時間を求めるには、
このことは、既に“標準時間の構成”で述べた。
さらに、ストップウォッチで測定したものについては、レイティングして正味時間を設定することも述べた。
つまり、
レイティングには、以下の様な代表的な方法がある。
①平準化法、又は、レベリング法
②合成レイティング法
③速度レイティング法
④オブジェクティブレイティング法
どの方法を選ぶかは自由であるが、私は②の合成レイティング法が最適と思っている。
この方法は、短時間でレイティング出来、しかも信頼度が高い。
しかし、この方法を使用するには、W・F法の習熟が必要。
私は、作業測定を行った観測用紙上で、いくつかの単位作業をその場でレイティングする。
観測用紙の空白を利用して、50RUから100RUくらいの作業をRWFで分析し、観測した時間と比較する。
ただし、この時間の中に、機械時間が含まれるのは好ましくない。
あくまで、人の作業時間を選択すること。
観測したすべての作業をRWF分析するには多くの時間を有する。
従って、2つ3つの単位作業を分析し、これとそれぞれの実際の測定時間とを比較し、全体のレイティング値に代用している。