≪B社・上海工場の事例 (その4)≫
~『工場内の3S・見える化』の教育・導入・定着・継続~
≪『Red Card』作戦の展開について≫
活動の進展に伴い、現場サイドでは手をつけることが出来ない部分が出てくる。
『お客様から観た工場の第一印象』でも述べたように、床に、棚に山と積まれた製品及び材料在庫の処置である。
これにも対処しないと、『3S・見える化』は完成しない。
その為には、材料の発注や在庫管理を行っている事務所や倉庫のメンバーも活動に巻き込む必要がある。
材料在庫や製品在庫で『廃棄』出来るものに『Read Card』を貼っていただき、出来るだけ一か所に集め、『見える化』を図るようにした。
しかし、スペース的にすべてを一か所に集めることができず、実際には数か所に点在した。

【写真は、廃棄材料に貼られた『Read Card』(1)】

【写真は、廃棄材料に貼られた『Read Card』(2 )】
廃棄重量や金額は、O総経理にお願いして算出していただいたが、ここでは数値を控えさせていただく。
この時、廃棄在庫に関しては「為替」を睨みながら、円高時に本社サイドで買いあげてもらうなど、会社全体として積極的な利用策を展開するようにO副総経理に提言しておいた。
≪[4]継続≫について
今回の活動をより強力に継続していくために、推進委員の選出とは別に以下のことを進めた。
[1]自分のための『3S・見える化』チェックシートへの記入
[2]『3S・見える化』パトロールの実施
[1]のチェックシートは、各班長が部下の目標達成状況を毎月チェックする。
班長のチェックシートは、係長がチェックする。
係長のチェックシートは、O副総経理にチェックしていただく。
そして、各人が書いた目標を毎期毎期レベルアップしていく。

【写真は、自分の為の『3S・見える化』チェックシート記入風景】
従業員全員でこのチェックシート記入後、O副総経理から「このシートの目標達成度合いは、賞与の考課基準の一つにします」と言うお話が全員に向けてあった。
O副総経理も、我々がいなくなった後の『3S・見える化』活動の継続を彼なりに考えていた。
[2]は、推進委員を中心に、毎月定期的に『3S・見える化』のパトロールを実施する。
パトロール時のチェックポイントは、375枚の写真である。
パトロールは、作業時間中だけでなく作業終了後も実施していただく。
さらに、自分たちで確認したい項目の強調月間を決めて実施してもよい。
例えば、作業服を正しく着用する月間、挨拶月間、窓ガラスの汚れをチェックする月間等々。
そして、パトロール結果を所定の用紙に記入し管理していく。
≪『新テーマへの挑戦』≫
ここからは、今回のプロジェクトとは別に、私がB社・上海工場に望む内容である。
まず今回実施した『3S・見える化』の活動を、『上海工場のDNA』としていただきたい。
そして、この『3S・見える化』を今後より進化させ、上海から日本へ輸出していただきたい。
既述しているように、『3S・見える化』はあくまで『手段』である。
それ自体が『目的』にはなりえない。
しかし、経営改革の強力な手段である。
『3S・見える化』をDNAとし、今後は『Only 1』のモノづくりを目指していただきたい。
なぜ『Only 1』のモノづくりを目指すのか。
答えは、昨年12月、このプロジェクトのキックオフ時に、K社長が話をされた言葉の中にある。
その中でK社長は、「私は、価格競争は行わない」とお話しされた。
価格競争を行わないとは、どういうことか。
独占企業なら、自分の好きなように価格を設定できる。
また一般に言われていることを信用するなら、価格競争をしなくても製品が売れる企業は、製品の世界シェアが70%以上の企業か、国家から受注している企業である。
つまり、K社長の方針は明快である。
価格競争をしないためには、必然的に『Only 1』のモノづくりが出来る企業を目指すということである。
その意味で『Only 1』という言葉を用いた。
具体的には、ここに示すステップで今後の活動を展開して頂きたい。
既に、ステップ1のテーマについては、現場を対象とした勉強会を終えた。
(ここからは、顧客様との守秘義務に基づき、内容を控えさせて頂く)
最後に、大変耳の痛い話をした。
B社・上海工場の経営陣には、『長期的な視座』を持っていただきたいと。
上海工場の存在理由は明白なハズ。
しかし、この工場を経営されている経営幹部の皆様からは、この工場を具体的にどのようにしたいのか。
2・3年先には、どのような姿を目指しているのか、その意志や志が殆ど感じられなかった。
つまり、経営を進めるうえでの『経営理念』やそれを実現するための『経営戦略』がみえてこなかった。
まずここを明確にし『戦略的な経営』を実践して頂きたい。
次に、それを実現するために、具体的な戦術に落とし込んで頂く。
その戦術の一つに、先ほどの『新テーマへの挑戦』(Only 1)のモノづくりが採用されたならば、この挑戦目標はより身近なものとなり、推進可能なものとなる。
最後の最後に大変厳しいことをお話ししましたが、これもB社・上海工場が《Only 1 モノづくり》を目指していくうえで、今までの経営スタイルからの決別が必要と考えるからである。
どうか、ご理解を賜りたい。
・・・ おわり ・・・