Ⅱ.従業員の意識の覚醒
前回、改革を阻む『4つの壁』について説明した。
会社の経営改革(広い意味)を依頼され、これを引受け実行に移していく場合、事前に十分な調査を行う。
財務諸表による経営数値もさることながら、私が特に注意する点は以下の内容である。
(1)経営者の持っている『ツキ』。
非科学的でコンサルタントらしくないと思われるかもしれないが、経営者にとって最も大切なものは『ツキ』だと信じている。
『ツキ』と『運』が無ければ、絶対に成功しないと思っている。
『ツキ』と『運』の違いに関する説明は、ここでは省く。
(2)従業員の『挨拶』。
初めて訪問した私というお客様への挨拶、声の大きさ、言葉の明瞭さ、案内の態度、待っている間の対応等。
私は、これらに従業員一人一人の『人質』が現れると信じている。
会社は、『異なった人質の集合体』である。
この『人質』が『仕質』にあらわれ、『仕質』が昇華して『社質』となる。
多くの場合、企業はこの『社質』で判断されるされる。
従って、良い意味においても悪い意味においても、『社質』のもとになる『人質』は、大切な判断基準である。
(3)会社内部、特に作業域や通路等の『3S状態』。
最初に会社を訪問した場合、経営幹部(通常、社長さんの場合が多い)から、会社概要や現在の取り組み事項等を説明していただく。
しかし、私はそんな話よりも実際に会社内を見学させていただき、自分の目で見て経営幹部の話が正しいかどうかを判断する。
なぜなら、経営者がいつの場合も現場を正確に把握しているとは限らないからである。
従業員の態度や、会社内部を見せていただければ、ほぼそれで判断できる。
この時下した判断は、80%以上の確率で正しいと思っている。
(4)工場内に置かれた『モノの管理状態と動線』。
『モノ』を直接床に置いていたり、決めた場所に置かれていなかったり、また、動線がシンプルでない工場等では、どんなに『3S』に取り組んでいても、直ぐに乱れてしまう。
あとは独自の調査シートに従って進めていく。
そして多くの会社の場合、最初に実行に移すのが『従業員の意識の覚醒』である。
私が目指すのは『当事者意識の改革』である。
私は『当事者意識』とは、従業員が自分に与えられた仕事(業務)に対し、能動的にかつ積極的に責任を持ってこれを成し遂げることだと考えている。
言葉を変えれば、その仕事(業務)のプロに徹すること、といってもよい。
前項で記した、改革に前向きでない従業員の大部分は、この意識に欠けている。
彼らは多くの場合、月給を貰えばいい。
8時間いたら、あとはおしまい。
知っていても知らないふりをする。
見えていても見えないふりをする。
自分ではなく、誰かがやってくれるだろう。
このような従業員に対しては、先ず『意識の覚醒』が必要である。
周囲の状況や環境の変化、お客様の嗜好の変化等、競争相手の動きに気づいてもらわなければならない。
続く