海外進出企業において、海外工場のコスト削減、生産性向上による収益の向上は、国内と同様に重要な課題である。

 

 しかし、国内と決定的に異なる点は、派遣されている日本人スタッフの数が極端に少ないことである。

 

彼らは、僅かな人数で現地の従業員を指導し、多くの問題を処理し、基本的には国内と同様の管理を行っている。

 

当然そこには、スタッフのマンパワー不足が発生する。

 

彼らは、現地の実情に適した解決策を、優先順位をつけて実施しているが、そのために多くのスタッフは彼らの労働時間を犠牲にして、対応しているのが真実の姿である。

 

従ってここで重要となるのが、国内マザー工場や本社サイドの役割である。

 

国内サイドは、海外工場に対する要求もさることながら、積極的な支援や適切な情報提供に努めなければならない。

 

タイトルの「海外工場の製造力強化」について、国内側より支援するポイントは、以下の4点を重点に実施することが望ましい。

 

  (1)原材料の現地調達と国際調達

 

  (2)効率的な情報収集・情報交換

 

  (3)生産設備の現地適応

 

  (4)生産技術力の強化と現地人材の育成

 

Ⅰ.原材料の現地調達と国際調達を急ぐ

 

 原材料の現地調達は、既にどの企業も実施しており、コスト削減には必須の項目である。

 

特に優秀な現地共栄会社の開発と育成は、ライバル企業との競争において大きなアドバンテージとなりうる。

 

現地共栄会社の開発においては、工場周辺のインフラが見落とされがちなので、ここは要注意である。

 

開発にあたって、もし自社の海外工場に現地共栄会社の近くに住む従業員がいれば、この人間をフルに使って相手の情報を収集することが大切である。

 

日本人は警戒されていて、真実の情報はなかなか収集し難い。

 

共栄会社の選定にあたっては、国内とかなりの相違がある。

 

その国の社会、文化、風土をよく尊重するとともに、その評価は客観的にすべきである。

 

また、昨今のリスク管理の重要性に鑑み、「取引契約書」や「品質契約書」等は、明確に取り交わしておくこと。

 

すでに取り交わしている企業でも、定期的な見直しをお勧めする。

 

 同時に、重要部品の内製化も必要である。

 

現地工場の技術力を高め、原価力を向上するために、内製化のメリットをよく検討すること。

 

内製化に際しては、生産技術、製造技術の海外移転をはかる。

 

また、技術移転に対しても、現地人材の育成をはかる。

 

ただし、育成した後のケアを忘れてはいけない。

 

彼らには、日本人の様な愛社精神は期待できない。

 

彼らの多くは、自分のコア技術が向上するとそれを武器に、ライバル会社に平気で自分を売り込む。

 

そして、少しでも報酬がアップするものなら、もう次の日から他社の社員となっている。

 

このことは彼らの習慣なので、日本人の道徳観で判断すべきではない。

 

はじめから認識しておかなければならないことである。

 

 最後に、国際調達も考えた幅広い調達方法を実施していく。

 

近年の高度化した情報網を利用すれば、調達コストの大幅な削減を可能に出来る。

 

Ⅱ.効率的な情報収集、情報交換

 

 海外工場の企業体質の強化をはかり、真の国際企業に成長させるためには、広い情報網を持ち、効率的な情報収集を行い、日本国内の関連部門や、他国へ進出している兄弟会社と情報交換を図ることが重要である。

 

 (1)海外工場における情報収集

 

   ①現地経済紙による経済情報の収集

 

   ②日本の経済紙による日本および国際情報の収集

 

   ③ジェトロからの情報収集

 

   ④現地工業会や現地の日本商社からの情報収集

 

   ⑤上記のいずれの場合も、収集の手段としてインターネットが大いに役立つ

 

  広く情報の収集に心がけ、特に為替、エネルギー、環境問題、原材料の動向、政治・経済の動きには記録等を残し、整理が必要。

 

  このことが、やがて工場経営に大きく影響してくる。

 

  日本人スタッフの派遣期間は、企業によっても異なるが5年が平均である。

 

  従って、後から来るスタッフの為にも、これは是非継続して欲しい。

 

 (2)日本国内との情報交換

 

   ①モノづくり技術情報の交換

 

   ②原材料の調達地域・調達価格情報の交換

 

   ③現地従業員の一般教育、スタッフ教育

 

   ④日本国内の法制度の改定(最近の傾向として、特に環境問題に関する法制度の改定は頻繁に行われている)

 

 (3)現地商社との情報交換

 

  原材料の調達国と調達価格、調達ルート、リードタイム、品質レベル等、互いの情報の交換を行う。

 

Ⅲ.生産方式を現地に適応させる

 

 海外工場の製造力強化を図る場合、今までのように単に日本国内から設備を持ち込むのではなく、独自に開発したり、現地での調達を図らなければならない。

 

 (1)海外工場での設備開発・製作

 

  海外工場では、優秀な技術をもった共栄会社が少ないという理由で、部品を内製化する傾向にある。

 

 このため、製造技術の核となる部分だけは、独自で開発をすすめるべきである。

 

 こうすることで、新たな要素技術の開発・蓄積にもつながっていく。

 

 (2)設備の予防保全体制の確立

 

 核となる設備の独自開発や装置等の現調化にともない、その保全技術者の育成も急がれる。

 

 設備の予防保全管理、保全技術の習得を目的とした現地従業員教育に対し、日本国内の本社サイドは十分な支援を行うべきである。

 

Ⅳ.生産技術力の強化と現地人材の育成

 

 海外工場の製造力を強化するうえで、その中核となる部分は生産技術部門である。

 

現地従業員に、基礎的技能を身につけさせるとともに、さらにレベルアップを図り技能者、技術者へと、計画的に育成していかなければならない。

 

これが生産性の向上や、問題に対する対応力の向上、品質力の向上へとつながり、製造力の強化へとつながっていく。